分類:齧歯目テンジクネズミ科
シートン大友の百獣画録 第25話「偶然生まれた名物」
前話のプレーリードッグは齧歯目リス科でした。今回のカピバラは齧歯目テンジクネズミ科です。二話連続で齧歯類が続くことになりますが、プレーリードッグとカピバラでは随分と印象が違います。片や地中トンネルに空調設備を完備した一級建築士、片や温泉に浸かってくつろぐ姿が全国の動物園で冬の名物になっている、あの丸い体の持ち主です。ちなみにカピバラは齧歯類で最大の動物なのですが、あの穏やかな顔を見てネズミの仲間だと思う人はまず居ないでしょう。
カピバラの温泉入浴は、今では冬の風物詩として広く知られていますが、実はこれ、完全な偶然から生まれたものです。きっかけは伊豆シャボテン動物公園。飼育員さんが清掃作業をしていたとき、作業中に溜まったお湯にカピバラが勝手に体を浸けてくつろいでいるのを発見したのが始まりでした。誰に教わったわけでもなく、ただ「気持ち良さそうだったから入った」。・・・第1話のトラは狩りの前にニオイを消すために水浴びをする戦略家でしたが、カピバラの入浴動機はもっと純粋です。気持ち良いから。それだけです。
この発見をきっかけに展示場に露天風呂が増設され、冬場にお湯に浸かるカピバラの姿が話題を呼んで爆発的に人気が上がりました。やがてこの展示方法は日本全国の動物園に広がり、今のような冬の名物になったわけです。元々南アメリカの高温多湿な水辺に棲んでいるカピバラは日本の冬の寒さが苦手で、かつては肌荒れを起こす個体も多かったそうですが、温泉に入れるようになってからは人間と同様に美肌効果やリラックス効果があることが科学的に証明されたと言います。・・・温泉の効能書きに「神経痛、筋肉痛、カピバラの肌荒れに効果あり」と書き加えても良いかもしれません。
ちなみにお湯の温度の好みは42〜43℃。人間で言えば、ぬるめでは物足りないと感じる熱めのお風呂好きです。銭湯の常連と好みが一致しているあたり、なかなか渋い趣味をしています。トラの入浴を「戦略的かつ美容効果もある合理的な入浴」と書きましたが、二十五話を経て再び入浴の話に戻ってくるとは思いませんでした。ただし今回の入浴には戦略も狩りも関係ありません。気持ち良いから浸かる、浸かったら肌が綺麗になった、温度は熱めが好き。・・・人間の温泉旅行と、ほとんど変わらないではありませんか。