今年の夏、私の母が子供たちが喜ぶと思って山から鈴虫を取ってきた。
だが子供たちは「いらない」と言った。
あまりに母がかわいそうだったので「絵のモチーフに出来るなら。」と私が貰うことにした。
しかし対面してみると、ゴキブリみたいで気持ち悪く描く気にはなれなかった。
夏の間ナスを買ってきて与えたり、霧吹きで水をやったりと世話をした。
鈴虫のオスは羽できれいな音色を奏で、懸命に求愛していた。
世話をしながら、そういった姿をみると愛着がわいてきた。
が、描く気にはならなかった。
オスが先に一匹また一匹と死んでいった。
母に「死骸はどうすればいいの?」と聞くと「メスの餌になるからそのままでいいよ。」と返答が来た。
母の言う通り、メスはオスを食べた。
求愛に使った羽は残して。
オスの愛は“栄養分がないから”という理由で食べてもらえなかったのか、はたまた愛の形見として食べれなかったのか私にはわからないが、この残された愛を「描きたい」と思った。